2015年12月29日火曜日

言葉に敏感になる

関西の方言で「あんじょう」という言葉がある。広辞苑を見てみると、「味よく」の音便「あじよう」の転。うまく、上手に。具合よく。・・と出ている。今では使うことは無いが、子供の頃はよく使っていた。標準語ならば「宜しくお伝え下さい」というところを、大阪では「あんじょうゆうといてや」となる。京都では「あんじょういうといておくれやす」となろうか。

俳句は詩であるといつもお話ししている。上記の標準語と関西弁、どちらの方が自分の想い(詩)をより良く表現できるか。どちらの方が効果的か。俳句を詠む際には、やはりこの様な検討も必要である。そのためには、常日頃から言葉に興味を持つことだ。

私はかつて、NHKの番組「俳句王国」に出演したことが有る。公開収録が芦屋のルナホールであり、講師は稲畑汀子先生、特別ゲストは当時の桂三枝、今の文枝師匠であった。このブログの読者諸氏の中には、当日会場でご覧になった方も多いと思う。

一緒に出演するホトトギスの女性の方と、会場とは別に収録が行われる汀子先生のご自宅の庭を下見をかねて散策し、句を練っていた時のことである。ホトトギスの高名な女流の方が汀子邸の玄関から出て来られ、私達を見るなり、「何、密会?」と仰った。私達が事情を説明すると、「何だ、そうなの」と笑っておられたが、この密会という古風な言葉が妙に印象に残った。

言葉に素早く反応するためには、先述の「語感を磨く」の一文でも述べたが、言葉に興味を持つことが大切だ。テレビやラジオ、新聞など、耳や目から入って来る言葉の中から、印象に残る言葉を見つけ記録していく、これが語感を磨く上で、ひいては俳句を詠む上で大いに役立つと思う。雑詠選を拝見していると、言語感覚に欠ける句がある。日本語になっていない句も見受けられる。これではまともな句は詠めない。言葉に敏感になってほしい。

        寒禽の声の弾けて松の幹     伸一路

この句はその「密会」の際に詠んだ句であり、俳句王国の番組内でも採り上げて頂いた。