2016年2月20日土曜日

「かな」の切り方

先日の句会でこんな句が出された。

     振り返る友と目くばせ初音かな

最近、このタイプの「かな」の切り方を目にすることがしばしばある。「かな」の切り方が理解されていないのだと思う。何とも感じない方が居られたら、それこそ問題である。同じ句会で出された「かな」で切った句を、いくつか例に引いてみよう。

     朝日射す庭木の中の初音かな
     落人の里の静寂の初音かな
     分け入りて突如頭上の初音かな
     さみどりの秘湯に不意の初音かな

句の出来・不出来は別として、どの句も「かな」と言う切字が効いている。初音のすぐ前を見て欲しい。どの句にも、「の」と言う助詞が入っているのが分かる。つまり、

      庭木の中の初音
      里の静寂の初音
      頭上の初音
      不意の初音

と、どんな初音であるかが分かるようになっていて、その後ろに「かな」という切字を据えて感動をあらわしている。つまり「そんな初音であることよ」と感動しているのである。ところが、掲題の句では、目くばせという言葉の後ろに、いきなり初音がきており、初音の前に助詞が無い。

      目くばせ初音

こんな初音は聞いた事がない。つまり、最後を「かな」という切字で切るならば、詠嘆する対象の物(掲句では初音)をしっかり説明して、その感動を「かな」という切字で表現するという叙し方、言葉の並べ方が必要なのである。

      振り返る友と目くばせする初音

と、「かな」を取って詠むのも一つの方法である。