2016年7月4日月曜日

ルマン24

「伝統の自動車耐久レース、第84回ルマン24時間は18日から19日にかけて、フランス西部ルマンのサルテ・サーキットで決勝が行われ、トップを走行していた中嶋一貴選手のトヨタ5号車が24時間まで残り約3分でマシントラブルのため失速し、初の総合優勝を逃した。ポルシェが2年連続18度目の優勝を果たした。」これは読売新聞に掲載された記事です。

トヨタは日本のメーカーとしては1991年のマツダ以来25年ぶり2度目の、トヨタとしては初めての優勝を目前にして、エンジンが止まってしまったのです。残り約3分を走り続ければ優勝できたのです。トヨタチームにとっては何が起こったのか、信じられない事だったと思います。

後日の読売新聞にトヨタの広告が掲載されました。タイトルは「まだ何かが、足りない。」とあり、「『敗者のままでいいのか』、あえてプレッシャーをかけ、悔しさを跳ね除ける戦いを続けてきた。全員が、力を尽くし。改善を重ね、『もっといいクルマ』となって戻ってきたル・マン。悲願達成・・・と、誰もが、その一瞬を見守る中、目の前にあったのは、信じがたい光景だった。(以下略)」と悔しさが滲む内容でした。

思えば恐ろしいことです。100%間違いがないと思っていたことが、直前になって齟齬を来たすのです。しかしあり得ない事では有りません。世の中に絶対という事は有りえないのです。嘗て、ある俳句協会賞の最優秀賞に決定した作品の句数が、規定の30句に1句足りないことが判明したことが有りました。この他、送り仮名が1字間違っていたため、最優秀作品が失格となったこともありました。

いずれも、ほんの一寸した油断が原因なのでしょう。人間のすることですから、完璧というものは有り得ません。そこに一人でする仕事の限界が有ります。必ず複数の人が目を変えて確認することの大切さを、銀行員時代に先輩から叩き込まれました。札束の計算は、先ず束を縦に数える縦読みをし、次に扇形に開いて横読みをします。更に紙幣計算機に、上下逆にして二度掛けてやっと一束の計算が終わります。手から手へ渡す時には、もう一度札束を計算機にかけて、お互いに納得してから授受します。これだけしていても、束の数え間違いなど、違算は起こるのです。

諺にも「九仞の功を一簣に欠く」といいます。「人事を尽くして天命を待つ」という諺もありますが、どんな仕事でも、勿論俳句の世界でも、この慎重さは大切だと思います。